雪の季節がやってきた

 遠野に来て9回目の雪の季節が来た。南のほうから来たので、寒さには弱いほうだ、と思う。でも、最初の雪を楽しみにしていた気持ちはあって、それはいまも変わらない。
 今年の降雪はいつになく遅く、ちらついたのがつい先日で、きょうやっと地面が雪で隠れた。ほんの薄く地面を覆うだけで景色が一変するところが雪のすごさだ。白、というのもいい。
 なんて余裕のあることを言っていられるのは最初のうちで、雪かきに追われ、しだいにうんざりしてくるのだ。
 さりとて遠野は雪のあまり降らないところなのでいい。日本海側はいっぱい降り、いっぱい積もる。日本海側の雪国の人たちの生活は、太平洋側の同じ緯度の人たちの暮らしと別物だ。
 ずいぶん前、そういう日本海側の豪雪地帯の人たちが遠野に1月にやってきた。そして雪のなさに驚き、風の強さと寒さに驚き、よくこういう場所に住んでいられるもんだ、自分たちのところは暖かくて風のないところでよかった、というような感想を残して帰っていった。
 翌年、遠野の人たちがその豪雪地帯を訪れた。軒下まで積もる雪に驚き、屋根上の1メートルは超そうという雪に驚き、よくこういうところに住んでいられるもんだ、さぞかし苦労が多いことだろう、自分たちのところは雪がなくてよかった、という感想を漏らした。
 隣の芝生は青い、はうらやましがる話だが、どうやら、車で2時間の距離にある太平洋側と日本海側の人たちは自分たちの住む気候風土のほうに、良さを認めたらしい。研修とかいいながら、自分たちの土地のよさ、住みやすさを再確認する旅だったりするわけである。