やぶさめ

           
           

 やぶさめは見ているとつくづく感じるのだけれど、馬と弓矢を使用する局地的な戦闘の演習というか、シミューレーションみたいなもので、現場には暴力と危険が見え隠れしてる。馬も弓矢もたいへん凶暴な存在である。が、同時に、なんともいえない美しさと気高さを備えている。
 馬たちはやぶさめがはじまる直前から高ぶりはじめる。どうしてわかるのだろう、ここ一番、という状況が。
 全速力で直進する馬と人。ひづめの音。斜め後方に放たれる矢。的を矢が射抜くときの高らかな音。シンプルで迫力のある瞬間。けれど、二度と再現できないぐらいとても複雑な出来事。
 神事のなかに、やぶさめという形で争いごとや戦闘のシーンが埋め込まれ、それを拍手喝采することによって。人々が普段の生活の安寧を得ることができるのなら、それはやはり平和をもたらす聖なる戦闘シーンという意味で、まつりの本義をなしていると思った。